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【状況シーン】 ある営業マンは、長年にわたって契約していた担当の仕事を、ライバル会社に奪われてしまった。帰宅した営業マンは、大勢の同僚がいる中で上司に正直に報告しましたが、そのとき、下を向きながら歯で唇をグッと噛んでいた。 【このときの営業マンの本心・心理】 「歯で唇を噛む」というしぐさですが、これは自己タッチのひとつで、「悔しさ」、あるいは「恥ずかしさ」などといったマイナスの感情が生じたときに出るしぐさです。 担当していた仕事をライバル会社に奪われたという事実を知ったときに、まず「悔しさ」を覚えたはずです。できれば、なかったことにしたいと思ったかもしれません。それがプライベートなことなら、酒でも飲んで一晩寝れば、スッキリと忘れることもできたでしょう。 しかし、こと仕事上のこととなるとそうはいきません。組織の一員として働くことで給料を得ている身としては、たとえどんなに不快であっても、業務上のことを上司に正確に報告する義務があります。 そうすると、上司から厳しく叱責されるかもしれません。その屈辱とストレスにも耐えなければなりません。そんなストレスを避けたいと思うのは当然でしょう。それでも上司に報告せざるを得ないのは、そうしなければならないという社会の「オキテ」が存在しているからです。 私たち人間は、社会を構成して生きるようになって以来、そんな生活を続けているのであり、生きている以上、誰もが、多かれ少なかれ、そんな事態に日常的に巻き込まれています。すべてに満足し、快適さだけに包まれて生きている人など出会ったこともありません。 そういう意味では、私たちは、常に快適さを求めて不快を避けようとしている一方で、社会のオキテ(現実)を目の前にして引き起こされる不快に耐えながら、なんとか折り合いをつけて生きている存在だといってもいいでしょう。 ですが、そんな人間には、強い不快感から自分を守るための自己防衛メカニズムが備わっています。 たとえば、体の一部に刺激を与えることで、不快感や緊張感をやわらげているのです。特に「歯で唇を噛む」というしぐさは、不快が強い状況で典型的に表れるとされています。 唇への刺激、それは、かつて幼児期の頃に、母親に抱きかかえられながら、指で唇をやさしくなぞってもらった感触、あるいは乳を含んだときの唇の感触の記憶であります。 ★その快感は、まさに動物的なものであり、もはや記憶の奥底に眠っているかもしれませんが、それを自らの行動で蘇らせ、一時的ではあるものの、心の安らぎを見出そうとしているのです。 それは、歯で唇を噛むという行為だけに限りません。手を使って、なでる、さする、こする、つまむなど、人によってさまざまなパターンが見られます。おそらく、それらの行為は、それぞれの幼児期のうちに身についたもので、心のバランスをとるのに役立っていたのでしょう。それが成長していく中で断片的な形で残されたというわけです。 |
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